【塩谷物語】-塩谷(しおや)の地名の由来-

北海道の地名の多くは、明治政府による北海道開拓が始まる前から住んでいた先住民族「アイヌ」がつけた地名が由来となっているものと、江戸・明治以降に本州から渡ってきた人たちが出身地名をつけたものなどがあります。

小樽市の字名(地域の名前)は、そのほとんどがアイヌの人たちがつけた地名が元になっています。ただ、アイヌの人々は文字で伝承せず口述で伝承する文化だったため、のちに和人が聞いた音をカタカナで表記し、それを後に漢字表記に直したそうです。小樽(おたる)も、もともとはアイヌ語で付けられた地名が起源とされています。(※小樽市の地名の由来については、機会がある時にご紹介します。)

塩谷(しおや)の地名の由来も、諸説あるそうですが、それらの多くはアイヌ語がもとになっていると言われています。ここでは、そのいくつかの説をご紹介します。

(説1)『シューヤ(鍋岩)』が起源という説。「シュー」はアイヌ語で「鍋」、「ヤ」は「岩」を意味するそうです。この地域に住んでいた村長(むらおさ・酋長)が、「岩に鍋をかけた」ことから、この場所が「シューヤ」となり、それが音声変化して「しおや」となったのだとか。
(※国道5号から小樽駅に向かう道路沿い、塩谷川にかかる橋のたもとに設置された河川名案内板には、塩谷川の「川の名前の由来」とありますが、川だけではなく、塩谷というの地名の起源のようです。明治期にアイヌの人々から聞き取りして解釈した「北海道蝦夷語地名解(通称:永田地名解):永田方正 編)には、「シュー・ヤ。鍋岩。サバネクル(酋長)が鍋を岩に掛けたりと云う」と書かれています。)
参考文献:「北海道蝦夷語地名解:永田方正 編 →(国会図書館近代デジタルライブラリー 蔵)

(説2)塩谷のもとになったアイヌ語が(説1)とは少し異なります。鍋(シュー)の形の岩が岸(ヤ)にあったかもしれない、という説。

(説3)北海道駅名の起源では、北海道の他の地域のもとになった言葉「ショー(岩)・ヤ(岸・磯)」がもとになったという説。
(※ちなみに「宗谷(そうや)」も、同じアイヌ語が元になっているという説もあります。)

結局のところ「塩谷」の地名の起源ははっきりしていませんが、いずれにしても、塩谷周辺に住んでいたアイヌの人々によって呼ばれていた場所が、その後、音に合わせて漢字表記され「塩谷」となった、と言うことのようです。
はっきりしない、と書きましたが、別の解釈をすると、とてもミステリアスであるともいえます。
このミステリアスな部分は、塩谷の魅力のひとつでもあるかもしれませんね。